Stetson製 モデル名:Whippet 1950年代
深みのあるグレーを持つ帽体(ぼうたい:ハットの原型)と、同系色のナローリボンとの組み合わせ。控えめな配色ながらこの形状が、高貴で洗練されたエレガンスを醸し出すwhippet。
この究極のモデルを生み出すに至った、古き良きStetson社の製帽に思いを馳せる。
Royal Stetsonという、高級なラインでの生産。Stetsonといえばカウボーイ・ハットや、いわゆるテンガロンハットの印象が強いが、Royal Stetsonは多分に都会の紳士を想定したブランディングだったのだろうと推測する。このwhippet(本来は犬の種類の意味)も、その名に反して粗野の似合わぬ、真性の紳士帽だ。
この個体は状態も良好で、ファーフェルトの毛並みも美しく、ふんわり軽いかぶり心地。
被ってるだけで人格まで高められそうな逸品。これぞ男子の粋というものだ。
Dobbs製 モデル名:unknown 推定1950年代
New Yorkの帽子会社「Dobbs」(現在も存続中)が、恐らくはライバルのStetson Whippetにインスパイアされて製作したと思われるエピゴーネン・モデル。推定50年代のプロダクト。
模倣とはいえ、Dobbsだって押しも押されぬアメリカン・ハッターの老舗。このモデルの特徴は何と言ってもこの孤高のカラーリング。Stetsonには多分ない、バーガンディ色のフェルト染め、リボンの配色、ブリムの折り返し部分の色あわせ、そのすべてが計算されたパーフェクトな出来。さすがDobbs、この意趣返しに老舗の矜持を感じる。
リボン前方とブリムエッジにシミがあるのと、個人的には大きいサイズなのが惜しいが、それらの点を除けば傷みも少ない良品。秀逸である。
大きめなサイズを調整するため、スエットバンドの内側に紙を折り挟んで着用するも一興。強風に飛ばされぬよう気を遣って被る、二度は会えぬであろうこの傑作。末永く、つきあいたい。
Borsalino製 モデル名:unknown 推定1940年代
帽体もリボンも漆黒で、ご覧のようにどっしりと重厚なスタイリング。巻き上げられ、堅くステッチングされたブリム端は、かぶり方のアレンジをほとんど許さない。こうしたハットの型をホンブルグといって、クラシカルなハットスタイルのひとつの典型である。
西部劇の悪役か、聖職者か。いづれにせよ前々世紀の遺物的風格も感じさせ、ストイックな印象。製造はボルサリーノ(イタリア)。創業1857年の、老舗中の老舗なので、その意味からも王道要素を少しも逸脱しない。ただし、フェルトはしなやかで、見た目より軽い装着感はさすが。
いまの時代に主流の、ミックスドスタイル・ファッションには、なかなか馴染ませにくい帽子だが、クラウンの凹みを伸ばしてまん丸にすれば、チャップリン的いわゆる山高帽(ボウラーハットとも)スタイルに早変わり。前後左右につぶしてマウンテン・ハット風にするのもハズシアイテムとして気が利いており、楽しいもの。
クラウンのアレンジでかぶりこなしたいヴィンテージ。こんなのが、あってもいいじゃないか。
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