本格ハットって、そのひとつひとつに装飾品としての帽子の永い歴史と、個人が長く愛用してきたその個人史とが、両方刻まれてます。
大人なら、そうした歴史を内包したスタンダードアイテムをひとつは持ちたいな、っていうのが僕の思いです。それはたとえばバイクとか、釣りとか、服の世界だとブーツとか、ジーンズとか、人によって趣味も含めてさまざまでしょう。愛用品には選び抜かれたホンモノを使いたいと思うし、どうせなら末永く付き合いたいと考えますよね。
またできれば自分の子供にも残したいし、出来ることなら何世代も伝承させたい。
僕の場合はそれが帽子、とりわけヴィンテージ・ハットなんです。
個人のライフスタイルと、生きてきた年代を確かに刻む帽子は、頭に載せる歴史そのもの。
ヴィンテージハットの、現行ハットにはありそうでなかなか無い、高さのある独自のフォルム。クラシカルでありながらまったく古さのない、普遍性あるデザインを、日常的に着用し、生活に、スタイルに、なじませるのが楽しいんです。
レトロなんだけど、王道の貫禄。
年代モノの帽子をかぶって街歩きしてみれば感じる、タウンユースに溶け込むけれども同時に屹立した存在感。
手に取ってみればたちどころに知れる、現行品にはないつくりのよさ。
今では少なくなった帽子専門メーカーの、モノづくりの矜持を隅々まで感じさせる出来に、往時をしのんでそっと頭に載せるのです。
ブリム(つば)とボディや、グログランリボンの幅に、完成された黄金バランスを見、真の正統派の持つ、ひかえめでありながら確かな品質を静かに嗜みます。
現代の大量生産で安価なハットも入門編にはいいけれど、やっぱり好きなのは1960年代くらいまでの、帽子職人が精魂込めて手作りした製帽品。機械の使用は補助的最低限だったであろう、そうした時代のヴィンテージ・ハットは、単に古いのとは違うオーラが感じられます。
自己満足かもしれませんが、アパレルメーカーのライセンス生産ものでは、こうはいかない気がしてなりません。
ただ頭にのっけてるだけじゃ、ないんですよね本人的には笑
Stetsonが挑戦した王道のホムブルグ・スタイル。正統派のフォルムを正確にトレースし、製造時代のファッションアレンジなどは極力排してる、気迫ある逸品。
いっさい型崩れなく、シミもキズも見当たらない極上のヴィンテージ。手に入れた喜びは格別のものがある。この誉れ高き仕上がりに、かぶるだけで身が引き締まるおもいがする。